法律事務所での就業後に起こりやすいトラブル
就業開始後に、事務所との間でトラブルが起こってしまったというご相談をいただくことがあります。面接時に聞いていた内容と相違があり、所長や上長と話し合いをしたが解消できそうにない。そのため、入所後すぐに転職活動を開始した、または早期退職を余儀なくされたという事態が発生しています。
一体何が原因なのでしょうか。大きな原因としては、面接時の就業に関する情報の確認不足が挙げられます。トラブルが起こった方に伺うと、「面接時に疑問点や諸条件で不明な点があっても解消しないまま入所してしまった」といったもの、また「準備しないまま面接に望んでしまい、働くイメージができないまま就業を決めてしまった」という話をよく耳にします。特に自己応募の場合、面接の場で待遇に関する情報は聞き辛く、不明点が解消できない傾向にあるようです。
そこで、これまで弊社にご相談いただいた事例から、就業後に起こりやすいトラブルを考えます。伺った内容の中で特に多かったものを、具体的な理由とともに対策を考えます。就職・転職活動を望む上で、是非参考にしてください。
■就業環境に関すること
面接時の説明よりも残業時間が多かった
【相談内容】
残業時間が面接時に聞いた時間よりも多く、戸惑っているというご相談内容です。残業時間は繁忙期と閑散期で波があるため、一概には言えないようです。特に首都圏にある法律事務所では、問い合わせ・受任件数が増えているところも多く、残業が増える傾向にあるかもしれません。
【対策案】
残業時間を確認する際には、閑散期と繁忙期の2つを確認し、どの時期が繁忙期か確認する方がよいかもしれません。実情を聞いた上で、就業後のイメージをしていただき、判断することが望ましいです。
先生や上長と合わない
【相談内容】
就業をしてみて、先生や上長と合わないというケースです。良く聞かれるのは、面接時と就業中のギャップです。面接では温厚そうであったのに、就業を開始してみると指導が厳しく、就業を続けられるか不安だというご相談内容です。
【対策案】
相性については、実際に就業をしてみないとわからない点が多く、事前に確認が難しいと考えています。そのため、弊社では法律事務所から求人のご依頼をいただく際、次のような質問をすることがあります。「これまで採用された方の中で、どういった方が事務所に合わなかったでしょうか」。この話をしてみると、先生や採用担当者、事務所との相性がある程度わかる場合があります。ご参考にしていただければ幸いです。
事務所の雰囲気がピリピリしていて働きづらい
【相談内容】
業務が忙しく、事務所の雰囲気がピリピリとしていて、働きづらいというご相談内容です。
【対策案】
忙しい環境が好きな方もいれば、ある程度落ち着いた雰囲気で仕事をしたいという方もいらっしゃいます。この点は事務所選びでも重要なポイントです。面接時に先生や上長になる方と話をして、雰囲気を感じていただくことはもちろん、面接後に事務所内を見学させてもらいましょう。忙しい事務所であれば活気があります。見学が難しいようであれば、先生だけではなく、他の所員の方にもお話を伺う機会を設けてもらうといいかもしれません。忙しい事務所ですと、所員の方が比較的早口の方が多いです。
休暇が取りにくい
【相談内容】
有給休暇や平日の休暇が取得しづらいという相談内容です。
【対策案】
本件は、特に小さいお子様がいる、介護をする必要がある方にとっては切実な問題だと思います。一般的に規模が小さい事務所ほど、一人一人にかかる負荷が大きくなる傾向にあります。ある程度人数がいる事務所であれば休暇は取得しやすいのですが、小規模事務所の場合は、面接時に現在の状況を伝えることが大切です。小さいお子様がいる場合、突発的な休みがあることをお話したほうが良いでしょう。ただ、休みが多くなると仕事の継続が困難になりますので、ファミリーサポートの利用なども検討いただくといいでしょう。
事務所の体制変更、事務所閉鎖の話があった
【相談内容】
所長より事業承継や他事務所への合流があることを告げられた、また事務所の閉鎖を考えているため転職を余儀なくされるというご相談内容です。
【対策案】
近年、弁護士の高齢化が問題となっています。健康面を害していること、また体力や気力の問題で事務所の継続が困難となり、事業承継や他事務所に引き継ぐ、事務所を閉鎖するというケースが相次いでいます。
このご相談については、実際に就業をしてみないとわからないことが多いのですが、所長が高齢の場合ですと、近々承継や閉鎖をする計画があるかもしれません。事業承継の場合は、後継者候補となる方が面接に同席することも多いので、その方との相性を見る必要があると思います。また、引き継ぐ、閉鎖するという場合ですが、不可抗力のため転職活動においてマイナスになることは少ないです。ただ、履歴書、職務経歴書にはその旨を明記することが必要です。
■業務に関すること
教えてくれると聞いていたが、実際にはほとんど教えてくれない
【相談内容】
面接時に、わからないことがあれば先生自身や先輩事務員が教えるとのことで入所したが、業務が忙しく、外出が多いため、聞ける環境ではないため、わからないことがあっても聞き辛い、質問をしても後回しにされてしまうというご相談内容です。
【対策案】
面接時に教育体制について具体的な質問をしてみてください。ただ、教育体制が整っている事務所は、まだまだ少ないのが実情で、都度先輩から教わることが大半です。そのため、入所後にどのような業務を担当するか、どのような業務の進め方になるのかを質問することで、イメージが掴めると思います。
■待遇に関すること
求人票にあった給与、面接時に聞いていた給与と支給額が違う
【相談内容】
求人票記載の給与額に幅があったため、いくらになるのかわからなかった。実際に支給された額が想定していたよりも低い額だったというご相談内容です。
【対策案】
試用期間中は給与が提示よりも低い水準であったりすることもあります。また、幅をもたせた額で記載がある場合、試用期間中の就業を見て決めるということもあります。こういったケースでは、面接時に試用期間中は変更があるか、本採用後の給与額の決め方について、しっかりと確認することが必要です。この質問をした際、はぐらかすような対応をしてくる場合は注意が必要です。
社会保険に加入していないことが判明した
【相談内容】
就業を開始してから、社会保険が完備ではなく、雇用保険、労災保険のみだったことが判明したというケースです。
【対策案】
企業から法律事務所に転職した場合に、よく伺う相談内容です。企業では社会保険を完備していることが一般的ですが、法律事務所では加入していないケースもあります。このことを知らず、面接時に確認しないで、就業後に気付くということもあります。
本件は求人票で必ず確認し、何も書いていないケースでは面接時に確認をしましょう。社会保険の記載がない場合は、加入をしていないケースが大半です。